メディアに紹介されました。

平岡篤頼『記号の霙』が、中日新聞(2008.6.15)にて紹介されました。

文学の地平広げる批評精神(評者:三田誠広氏=作家)

(…)文学は剣玉だ、というのが平岡さんのスローガンだったのだが、この意味不明な言説に、平岡さん独特のユーモアと批評精神がこめられている。
ヌーボーロマンも内向の世代も、既存の文学を批判し、文学の可能性を模索することで、新たな地平をきりひらいてきた。それはただ破壊するだけの前衛とは違って、新たな視点を設定することで、既存の文学の限界を超え、新たな価値観を構築しようとする試みだった。既存の文学用語では語れない未知の領域を、平岡さんは「剣玉」と呼んだのだと思う。
翻訳者や評論家というのは、先頭をきって走っていく作家のすぐあとを、控えめに伴走するといったイメージがあるのだが、この遺稿集を読むと、実は平岡さんは誰よりも過激に、可能性の地平に向かって、先頭をきって走っていたことがわかる。
ここでとりあげられているのは、井伏鱒二、森敦、武田泰淳小島信夫吉行淳之介安部公房小沼丹といった、既存の文壇でも評価された作家の作品だか、批評の視点が新しく、それぞれの作家の新しさと可能性に、まったく独創的な光があてられている。いま読み返してみてもわくわくするような興奮を覚えた。これこそが平岡さんの「剣玉魔術」なのだろうと思う。(抄録)

ご高評ありがとうございました。


記号の霙 井伏鱒二から小沼丹まで (WASEDA bungaku Classic)

記号の霙 井伏鱒二から小沼丹まで (WASEDA bungaku Classic)