早稲田文学の表紙について

2008年4月から第十次として再スタートをした早稲田文学。表紙は第一号から毎号、内容と関係のある人物を篠山紀信氏に撮影していただいています(グラビア付)。今日は、第一号から前号までを振り返ってみたいと思います。


早稲田文学1
川上未映子(「早稲田文学1」2008年4月刊行)
「第十次準備号」である0号(2005年2月)で「わたくし率 イン 歯ー、または世界」を発表、続く「乳と卵」で芥川賞を受賞した川上未映子さんが次に書いたのは散文詩「戦争花嫁」でした。ヨコ向きに配置した写真が不安感を煽り、目が離せなくなります。裏表紙も川上さんです。こちらは、どことも知れぬ打ちっぱなしのビルの階段で撮影されたもので、ちょっとした仕掛けがあるのですが、それはぜひ実物を手にとってご覧ください。


早稲田文学 2号
ミシェル・ビュトール(「早稲田文学2」2008年12月)
ヌーヴォー・ロマンの作家の一人ミシェル・ビュトールが来日、講演と論考による特集を組みました。さらにビュトール主演のドキュメンタリーを完全収録したDVD付(川上さん「戦争花嫁」の朗読も収録)。裏表紙は、東浩紀池田雄一宇野常寛大澤真幸大森望佐々木敦新城カズマ千野帽子豊崎由美中森明夫福田和也前田塁+、山本充、芳川泰久渡部直己という15名の方々が参加する「十時間連続シンポジウム」の際に撮影した集合写真、壮観です。


早稲田文学 3号
東浩紀父娘(「早稲田文学3」2010年2月)
第23回新人賞の選考委員である東浩紀さんと娘さんを自室で撮影。仕事の様子を覗きんだり、キックのポーズをしたりする娘さんに光があたって、何とも可愛らしい。東さんの蔵書や棚が気になる!と評判にもなりました。そして、親子つながりで、特集は「コドモと/の/に/文学」。重松清さんが西原理恵子さん、金原瑞人さんとW対談するほか、国語教科書、児童書を読む大人、若者をめぐる論考を収録。裏表紙には、今号からはじまったウラジーミル・ソローキン「青脂」とクロード・シモン「農耕詩」という長篇翻訳、古川日出男「聖家族」ライブDVDの文字が大迫力で並びます。


早稲田文学 4号
古川日出男重松清(「早稲田文学4」2011年9月)
特集「震災に。」として、古川日出男さん『馬たちよ、それでも光は無垢で』をめぐる、重松清さんとの対談を収録。阿部和重+川上未映子+斎藤環+辛島デイヴィッド+市川真人の各氏による座談会、震災チャリティ「記録増刊 震災とフィクションの“距離”」に収めた短篇から6本を掲載しています。同特集では、世界中の災害のあとに書かれた言葉を集めました。また、今号から現在もつづくシリーズ「日本現代文学の、標的=始まり」を開始、大江健三郎特集その1を組みました。裏表紙は、今号に関わった世界中の執筆者を言葉がつないでいくイメージが載っています。


早稲田文学5
黒田夏子・松田青子(「早稲田文学5」2012年9月)
第24回新人賞で蓮實重彦選考委員により選ばれた「abさんご」の黒田夏子さんと、中篇「スタッキング可能」を発表した松田青子さん。両作は芥川賞受賞、三島賞候補と話題になりました。初回版、候補版、受賞版と3つのオビがあり、それぞれ仕掛けがあるのですが、すべてを見たことのある人はきっと稀でしょう。今号から4本の翻訳がはじまり、12人の翻訳者を集めた大座談会も収録。シリーズ特集では、タイと中国の若手作家による村上春樹トリビュート短篇も。裏表紙は、黒田さんを象ったコインと、うっすら透けて読める「abさんご」(実物でしかわかりませんが)。



そして今号。釣り師と浴衣女性のふたり。この流れでいくと、もしや……。
ところで、釣り師の目撃情報がありました。早稲田文学3、183頁より。追加情報を求む。

早稲田文学6 通常版・特装版」は9月6日頃発売。
Amazon早稲田文学編集室ウェブショップで予約を受け付けています。
http://www.amazon.co.jp/dp/494871707X/
http://www.amazon.co.jp/dp/4948717088/
http://www.bungaku.net/wasebun/bknum/manage/stdx.cgi

追加情報、来る!


というわけで、「早稲田文学6」の表紙の釣り師は、青沼静哉さんでした!
青沼さんのツイッターでは、もう一人のモデルが知人と瓜二つだった!?という当日の撮影秘話が語られています。こちらもぜひご覧ください!