早稲田文学6、表紙の女性の正体…!!

 
(左:早稲田文学6通常版 右:早稲田文学6特装版)
ご覧の通り、今号の「早稲田文学」は、釣り師と浴衣女性が表紙を飾ります。先日お伝えした通り、釣り師の正体は青沼静哉さん。巻頭を飾る小説「モルトモルテ」は、こちらで立ち読みできます。


そして、もう一人の浴衣女性は、今号で「盗まれた遺書」を発表する
仙田学さんです!!
つまり女装だったのです。写真もよく見ると喉仏がありますね。


仙田学さんは、第19回新人賞を「中国の拷問」で受賞。奇妙で、生理的不快感をもよおす設定と物語を、絶妙にこなれない文体(!)で描き、いとうせいこうスガ秀実松浦理英子山城むつみ渡部直己という5人の選考委員を驚き戦慄させました。
今年発表したライトノベル『ツルツルちゃん』(NMG文庫、続刊)では一転して、リーダブルな文体で既存の読者を驚かせ、女子高生の剃髪というモチーフで新たな読者を驚嘆させました。

ツルツルちゃん (NMG文庫)

ツルツルちゃん (NMG文庫)

その奇妙な発想と身の毛のよだつ描写は、新作「盗まれた遺書」でも存分に味わえます。その冒頭がこちらから立ち読みできます。


では、その仙田さんが女性物の浴衣の姿で映っているかというと、『ツルツルちゃん』のプロフィールには「趣味:蒸発と女装」という文言があったのです。何か隠された嗜好を覗き見てしまったようなイケナイ気分のまま、新作「盗まれた遺書」の編集は進み、表紙を決める段階でふと聞いてみたのでした。
「ほんとに女装をするのですか?」
すると、10代のころによく女装をしていたとのこと。その辺りのことをツイッターで書かれています。

なんと、蒸発と女装は連続していたんですね。「生活といううすのろがいなければ」という佐野元春の歌詞を思い出しますね。
ともあれ、仙田さんの「趣味:蒸発と女装」は、小説家・仙田学の誕生に先立つ重要な契機だったことがよくわかります。
そうして今回の表紙に至った次第です。


というわけで雅な佇まいで表紙をかざる仙田学さん、くり返しますが、今号で新作「盗まれた遺書」を書いています!
この作品は、一通の遺書が、天才的な万引き犯と孤独な喫茶店主人をつないでいくというもの。万引き犯のみつるは、喫茶店主人のみゆきに遺書を渡そうとするものの、なかなか実行できません。その内に、二人の関係は深まる一方、みつるの盗みもエスカレートして……、というところで詳細は本篇をご覧ください! 冒頭のみを立ち読みもできます。