「早稲田文学5」発売!


一年ぶりのナンバリング・タイトル「早稲田文学5」を、9月7日に発売!
年齢無縁の圧倒的女子力!! 75歳、筆歴70年の"新人"黒田夏子の受賞作、期待の若手・松田青子の巻頭中篇、川上未映子の待望の新作詩、ヤマザキマリの小説をめぐるエッセイ、と可憐にして野蛮な女子力に感染してください。蓮實重彦阿部和重ほか、男子もいるよ!
日本の小説と海外の小説の交差点となる2大特集とあわせて、今号も大ボリュームでお届けします!


まずは表紙を飾る、第24回早稲田文学新人賞を受賞した黒田夏子abさんご」。蓮實重彦選考委員に「これまでいかなる作家も見すえることのなかった言語的な現実」と高く評価されたこの作品は、固有名詞や代名詞を封印し、ひらがなを多用した文体で、ある親子の生を描き出します。受賞直後から新聞・ネットで話題となった「75歳の新人」が切り開く小説の新次元に注目です。
ともに表紙に登場する松田青子「スタッキング可能」は、「積み重ねできる」というタイトル通り、あるビルで働く人々を描きます。「会社員」という同じユニフォームを来ているような人たちも、コージー・ミステリにハマって妄想を膨らませたり、冷たくされた女子社員を「レズビアン会議」にかけたり、少年マンガの名ゼリフを唱えて己を鼓舞したり、オランウータンの上司に戦々恐々したりとじつは大賑わい。「あるある!」と頷くことしきりの観察眼と実験的手法があわさった意欲作!
川上未映子「わたしの赤ちゃん」は、小誌掲載の「戦争花嫁」(結婚)、「三月の毛糸」(妊娠)につづく新作散文詩。出産したばかりの母親が、赤ちゃんの愛らしさを喜び、成長への期待を夢想しつつも、赤ちゃんに迫る見えない脅威に苛まれる。ピンクの紙に濃紺のインクで刷った散文詩、ぜひ一気読みしてください。
阿部和重「For Your Eyes Only」は、著者近刊の『クエーサーと13番目の柱』を想起させる、任務にかかわる男の話。最新機器と五感を駆使してターゲットを狙う男の語りは、緊張感に満ちた散文になっています。男の任務は果たして…。

前号からはじまったシリーズ「日本"現代"文学の、標的=始まり」§2はオオエからハルキへ。まずノーベル賞予想のトップにあがった、この世界的な作家について、国外の視点から見てゆきます。タイのプラープダー・ユン、中国の田原という、春樹作品を読んできた若手作家によるトリビュート短篇。さらに辛島デイヴィッド、河野至恩は、アメリカ、イスラエルの読者(批評家・研究者)にどのように異なるかたちで読まれているか論じます。大江健三郎特集は、大杉重男と石川義正の連載で議論を深めてゆきます。
そしてシリーズ§2.5翻訳という未来では、まず座談会「十二人の優しい翻訳家たち――グローバルに移動する小説を追いかけて」。最近の海外文学を読んでいて気になるのが、「この作家はどこの国に分類すればよいのか」。移民の背景をもつ作家をはじめ、仕事や学業など、さまざまな理由で国を超えて書く作家が目立っています。そうした「移動」をテーマに、気鋭の翻訳家たちが現在の世界の文学について熱く語ります。「海外文学を読みたいけれど、どこから読んだらよいかわからない」という人にうってつけのガイドにもなっています。
長篇小説翻訳プロジェクト一挙4作連載開始! オランダのセース・ノーテボーム「儀式」(松永美穂訳)、ロシアのタチヤーナ・トルスタヤ「クィシ」(貝澤哉・高柳聡子共訳)、アメリカのドン・デリーロ「ホワイトノイズ」(都甲幸治訳)、フランスのアラン・ロブ=グリエ「もどってきた鏡」(芳川泰久訳)と、どれも重量級の作品をこれから毎号掲載していきます。
ヤマザキマリ「ガルシア=マルケス偏愛」は、10代の頃に出会って以来、くり返し読み続けてきた『百年の孤独』の作家を論じたエッセイです。著者が旅するなかで何度も見てきた「マコンド的」形容したくなる場所とは?
単行本刊行前から、かなり熱く話題となっているウラジーミル・ソローキン『青い脂』の座談会では、この傑作にして迷作を翻訳するに至った裏事情(笑)から、作品と作家の背景を語ります。


早稲田文学5」は全国書店、およびAmazon等のネット書店、早稲田文学ウェブショップでご購入いただけます。


早稲田文学5もくじ
【表紙・グラビア】篠山紀信


▼第24回早稲田文学新人賞発表
【受賞作】
黒田夏子 abさんご
蓮實重彦 選考にあたって


【小説】
松田青子 スタッキング可能
【詩】
川上未映子 わたしの赤ちゃん
【散文】
阿部和重 For Your Eyes Only


▼シリーズ【日本“現代”文学の、標的=始まり】§2 オオエからハルキへ
【海外作家はハルキをどう読み、書くか トリビュート短篇】
プラープダー・ユン 月の国の神と悪魔(宇戸清治訳)
田原 いるかホテル(泉京鹿訳)
【海外のムラカミハルキ】
辛島デイヴィッド 孤独でセレブな長編作家 HARUKI MURAKAMI
河野至恩 イスラエルの読者と読む村上春樹、そして「世界文学」――「壁と卵」を越えて
【オオエについて考えつづける】
大杉重男 ディアスポラの不可避性と不可能性――日本人の条件(最終回)
石川義正 大江健三郎のふたつの「塔」――小説空間のモダニティ(3)


▼シリーズ【日本“現代”文学の、標的=始まり】§2.5 翻訳という未来
【座談会】
泉京鹿+岩本正恵貝澤哉+辛島デイヴィッド+きむふな +武田千香+堤康徳+都甲幸治+松永美穂+柳原孝敦+芳川泰久青山南
十二人の優しい翻訳家たち――グローバルに移動する小説を追いかけて
【コラム】
ヤマザキマリ ガルシア=マルケス偏愛
【座談会】
望月哲男+松下隆志+貝澤哉 リプス! リプス! リプス!――ウラジーミル・ソローキン『青い脂』刊行記念座談
大型翻訳新連載
セース・ノーテボーム 儀式(松永美穂訳)
タチヤーナ・トルスタヤ クィシ(貝澤哉・高柳聡子訳)
ドン・デリーロ ホワイトノイズ(都甲幸治訳)
アラン・ロブ=グリエ もどってきた鏡(芳川泰久訳)


早稲田文学5

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