多和田葉子「晩秋のカバレット「変身」」について

早稲田文学6」発売から一週間が経ちました。
全国の書店で販売していますが、お店により搬入が遅れていたり、取り扱っていなかったりするところがあります。そのときにはご面倒をおかけいたしますが、お店の方にご注文いただけますようお願いいたします。


さて、6号には、多和田葉子さんによる「晩秋のカバレット「変身」」というパフォーマンスのテキストが載っています。これは、フランツ・カフカの『変身』に基づいた作品です。
そもそも「晩秋のカバレット」とは、多和田さんとピアニストの高瀬アキさんによる朗読と音楽のパフォーマンスに付けられたタイトルです。毎回「ブレヒト」「チェーホフ」「宇治拾遺物語」などのキーワードを定め、多和田さんが新しく創作したテキストと高瀬さんの作曲によるピアノ曲のコラボレーションです。朗読と音楽の最中、ふたりの歌、言葉の掛け合い、手足を打楽器のように使う演奏や、ピアノの弦でピンポン球を飛ばす前衛的なパフォーマンスなどが入ります。


今回掲載するテキストは、2012年11月、シアターΧ早稲田大学小野記念講堂で、「虫の知らせ」と題され行われたパフォーマンスの台本です。
先ほどカフカ「変身」に基づくと書きました。
全体は28の断章からなっていて、その約三分の一が、多和田さんによる「変身」の翻訳です(ただし主人公の名前が、グレゴール・ザムザからゲンゴロウにかえてある!)。そして、「変身」の終盤のほうから逆順に、いくつかの場面を抜き出し、並べ替えられています。その間に、「変身」のテキストに触発されたと思しき、多和田さんの散文と詩が入ります。
「晩秋のカバレット「変身」」の冒頭は、妹が虫になった兄を、見放す場面からはじまります。
不穏と残酷を予感させながらも、テキストは、言葉遊びや常套句の反復と逸脱などを通じて、ユーモラスな像を描いていきます。たとえば、現代日本に蘇った「変身」では、兄さんは巨大なカブトムシ型のロボットになってしまうのです…! テキストは残酷とユーモアの両極に揺れながら、「変身」の虫に多彩なイメージと意味を編みこんでいきます。
詳細は、ぜひ実物で!
早稲田文学6 特装版


ちなみに、多和田葉子高瀬アキによる今年のパフォーマンスは、11月14日に早稲田大学・小野講堂で午後6時半から行われる予定です。今回のテーマは「魔の山」! 詳細は後日、こちらのサイトで告知されます(リンクは2012年のパフォーマンス「虫の知らせ」のものです)。
また、多和田葉子さん「晩秋のカバレット「変身」」についても解説を書いてくださっている松永美穂さんによるパフォーマンスの解説記事がこちらから読めます。